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研究大会報告

第35回与五沢矯正研究会報告

第35回の記念大会はバリ島での開催となりました。数年前に山下先生から研究会初の海外開催を企画していると聞き、お手伝い役としては、参加される人たちが気持ちよく過ごされることだけを考えていました。開催1年ほど前、ディレクターからアカデミックな部分はきちんと行うとのご指導をいただき、「よく学び、よく遊ぶ」をモットーにして研究会発足当初からの“give and take”の精神でいこうと企画し、会員の皆様による症例提示はいつも通りとしました。ただし1人1症例とはいうものの、30回記念大会から続けてきた「矯正治療その後」にスポットをあて、保定終了後の資料も準備していただき、たくさんの資料をバリ島までお持ちいただくことになりました。
大会初日の午前中は、37症例がブラタンルームに並べられ、症例を前にして論じ合う会員間の姿はさすがだと思いました。何よりも驚いたのは、ディレクターが用意されたCT画像のパネルです。ここは、バリ島ですよ。会員がパネルに群がり、師から学ぶ姿が目に焼き付いています。師に感謝。
2日目の午前中は、シンポジウム「適応~心地よくありたい」と題して第32回からの大会長5人のからご講演をいただきました。1人だけでも平気に1日中しゃべり続けてしまう方々ですから、30分ずつだけというのは、果たして可能なのかと思いつつ司会進行を務めさせていただきました。
まずは、山下会長から、このシンポジウムを企画するにあたって「矯正治療は人が心地よく過ごす手段です」というメッセージの発信とともに、30回記念大会以降、スポットをあててきた「適応」について理解を深めるための小まとめを行いたいこと、将来にわたるディスカッションができればということで、歴代会長に呼びかけをした旨のご説明がありました。
第32回会長の有松先生からは、これまでのサクセスストーリーから矯正治療のその後を表舞台にすることの変革、患者にとって心地よい状態という矯正臨床全体に対する「ものの見方」の変革を押し進めて、臨床に還元していくことが研究会会員の責務であるというご講演をいただきました。
続いて、第33回会長の星先生からは、適応を理解するための糸口として、ディレクターからお示しいただいた中でも、最も難しいと思われる「進化の方向と適応の関連性」についてご講演をいただきました。どうして日本人に叢生が多いのか?進化の歴史の中で適応したものであるとのその成因を考察していただきました。
第34回会長の池先生からは、適応を理解するための糸口の中でも「歯と神経、歯と関節や筋肉」にスポットをあててご講演をいただきました。歯根吸収はどうして起こったのか?関節頭はどうして吸収したのか?舌の適応限界を越えて再不整となったケースなど34回大会から学んだことをまとめて示されました。
最後に、ディレクターの与五沢先生から「生体の自己修復機能の一端をかいま見て」と題してご講演をいただきました。インプラントアンカーでねじ伏せられるような強引な矯正治療をうけていた、極度の歯根吸収を起こされた転医患者さんに対して、機械的な装置をはずしてから何もせず経過観察としていたところのCT画像による興味深い自然変化についてお示しいただきました。「今進んでいる先端が常に正しいわけではない」、「人間はいかに時空を超える思考ができるかが大切である」というお言葉も頂戴し、謙虚な姿勢で自然を知ろうとするorthodontistsでありたいとあらためて決意したのでありました。
シンポジウムディスカッションは、5名の演者にご登壇いただき、モノグラフ30巻の与五沢先生の論文をもとに進めさせていただきました。

1)矯正治療結果、その後を顧みて
動的治療中では無く、動的治療後(保定中と保定終了後)に問題が発生した割合をお伺いし、最近の患者さんが抱く、治療後の結果について問題意識の発現する率がどうなってきているかを、池先生と有松先生からお答えいただきました。

次に、
2)成長発育期は適応能が高い一方で、小さな個体から「隠された秩序」を読み解くことは困難と思われます。あらためて、早期治療についてそのテーマを横浜で行いましたので、山下先生からお答えをいただきました。

そして、
3)生体のシステムの秩序について、あえて順序立てするとすれば、序列を考えるヒントを各先生からお伺いしました。
たとえば、脳頭蓋と顔面頭蓋、関節窩洞と下顎、上顎と下顎、顎骨と歯槽骨、骨と歯、神経系・脈管系と歯・・・・・等々

最後に、
4)会場からのフリーディスカッションということで、深町先生がご自身の患者さんについてわかりやすくご説明いただきました。現在動的治療中ということでしたので、結果については、また研究会で報告していただけるものと切望しております。

第35回副会長 関 康弘

日時
2013年4月15日(月)・16日(火)
会場
インドネシア・バリ島 アヤナリゾート
日程
第1日目
(15日)
症例提示
総会
第2日目
(16日)
シンポジウム 「適応~心地よくありたい」
1「第35回バリ島大会シンポジウム開催にあたって」 山下 博史
2「第32回門司港における研究会から」
3「進化の方向性からみた適応」 星 隆夫
4「第34回大会から学んだこと」 池 元太郎
5「生体の自己修復機能の一端をかいま見て」 与五沢 文夫
シンポジウム・ディスカッション
総括