安い矯正治療の危うさ
安い矯正治療が本当に安いとは限らない
「子供の時に簡単な矯正装置をつければ安く済むよ」
「月額〇円で治療できるから」
と言われて治療を開始したものの、
「成人になって口元が出てしまった」
「3年で終わると言われた治療が5年経っても終わっていない」
というような事例は枚挙にいとまがありません。
安いと思って始めた矯正治療が、治療期間が当初約束した期間より長引くことによって費用がかさむばかりか、再治療も必要になって、最終的には矯正治療費用が当初の2倍、3倍になってしまったという相談は、Yogosawa Foundation会員医院に多数寄せられています。
「安い」と思って契約した矯正治療も、結局満足できる結果にならなければ 再治療となり、さらに費用や時間がかかってしまうのです。
Yogosawa Foundationでは、生体により個体差があることから、当初予定した治療期間が伸びることはあっても、当初予定した治療期間以上にかかる分の費用は、いただいていない医院も多くあります。
いつまでも終わらない矯正治療
患者さんの中には、治療期間がどの程度か確認して、治療費を計算して治療を開始する方もいらっしゃると思います。しかし、当初予定した治療期間の2倍、3倍の期間がかかっても治療が終わらないとYogosawa Foundationの医院にご相談くださる患者さんが増えています。
こういう場合、実は担当歯科矯正医自身が「どのように治療してよいかわからない」「思うように歯をコントロールできない」と、“責任を持った治療者”とは到底言えない状況に陥っていると推察できる事例も少なくありません。
「経営的・営利的に患者が欲しい」という理由だけで、
- 非抜歯で治療できる
- 短期間で治療できる
と、患者さんにとって聞こえの良いことを言い、結果的に知識や技術レベルが足りずに、思うように歯をコントロールできないような歯科医師、歯科矯正医が最近は大変増加しており、そういった歯科医師にあたってしまうと、動的治療期間が長引き、結果として費用も高額になってしまうという事例も多発しています。
矯正治療の修練を積み、基礎がしっかりできた歯科矯正医でなければ、いくら聞こえのいい治療方法を提示していても 失敗する確率は上がる一方です。
矯正治療は患者さんの協力(ゴムをかける等)も必要ですし、また、生体を相手にすることですから、予測通りの動きにならず、動的期間が長くなることもありますが、しっかり患者さんとコミュニケーションをとり、お互いの信頼関係を保ちながら治療を行っていくのも歯科矯正医の技量だと考えています。
Yogosawa Foundationで技術研鑽している歯科矯正医でも治療期間が長引くことはありますが、その場合はしっかりとしたご説明を差し上げています。また、Yogosawa Foundation会員の医院では、患者さんに非が無く、治療計画通りにいかない場合は、延長してしまった治療費用はいただかない医院もあります。
責任を持った歯科矯正医は、最初に約束した期間内で動的治療を終え、装置を外す時に予測通りに歯をコントロールできていると安心します。そして、患者さんが装置を外した時に喜んでくださることが、歯科矯正医にとって何よりもの報酬かもしれません。
「安い矯正治療をしないで!」なんて言えませんが・・
たとえ安い矯正治療を受けても、患者さんが歳をとってなお「治療を受けて良かった!」と思えるなら、それはそれで良いことかもしれません。しかし、矯正治療の専門家からすると、治療がうまくいかず、再治療が必要になり、とても辛い思いをされている患者さんが多数いらっしゃる現実に直面することもまた事実です。
再治療が発生するのは致し方ないことかもしれませんが、「安い」ことをウリにする歯科医院の中には、再治療の患者を量産しているのではないかと嘆かわしくなるような医院もあります。大変残念なことですが、現行の医療制度では、このような治療をストップさせることができません。
「安い」「高い」という金銭的尺度の違いだけで矯正治療の質が変わるのではないとは思いますが、患者さんを獲得したいからという経済的、経営的理由で金額を設定し、患者さんが望む治療のゴールを無視し、自分たち本位の、自分たちができる範囲だけの治療で終了させるなど、医療人として決してあってはいけないことです。
こういった現状を踏まえると、歯科医師であれば誰でも矯正治療ができてしまうという現行の歯科医療制度においては、患者さんがしっかりした矯正に対する知識を得て、歯科矯正医を見極める力が必要になってきているのかもしれません。少なくとも、複数の矯正治療だけを専門的に行っている歯科医師の意見を聞き、十分納得された上で治療を開始することが望ましいと考えます。
患者さんは大切なお金を矯正に投資するわけで、
「安い矯正治療をしないで」
なんて言えませんが、重要なことは、金額だけではなく、
「どれだけの期間内に、どのような専門的な治療を施し、治療結果を出せるのか?」
をしっかり確認することが大切です。
矯正治療を受ける患者さんが、歳をとった時にも
「矯正治療をしてよかった!」
と思えるような矯正歯科医に出会えることを願うばかりです。
治療費用だけを見て治療方法や医院を決めるのではなく、知識を身に着け、 複数の「矯正だけを専門に行っている歯科矯正医院」の意見を聞いて、選んでください。