治療前 Before Treatment
顔貌
口腔内
治療後 After Treatment
顔貌
口腔内
治療前 Before Treatment
治療方針
主訴は上顎前歯の前突と上下歯列の叢生。口元は口唇の突出感はあるものの閉鎖時に強い緊張が認められない口唇に余裕があるタイプである。セファログラム所見として、上顎がやや前方に位置しているものの、顔の奥行きが縦の高さに比べて深い。下顎は頭蓋に対し後方位にあるもののしっかりとした形状で調和がとれており、下顎枝も力強い印象を受ける。下顔面の高さは低い。これらのことから下顎の成長特に下顎枝を優位とした前方成長が見込めそうな一方、マイナス要素として下顎頭の後方への移動が起きた場合には、その程度によっては下顎の前方への移動がある程度相殺されることもあると予想される。現症の改善のために上顎左右側第一小臼歯、下顎左右側第二小臼歯を抜歯が必要と判断した。下顎の成長発育が見込めるタイミングでスタートしたい症例である。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
治療後 After Treatment
治療経過 概要
上顎にマルチブラケット装置を装着。上顎先行で治療を開始した。.012 round ss wireからLevelingを始め、7ヶ月目に.016 round ss wireにcoil springを用い犬歯遠心移動を行った。12ヶ月後に上顎第二大臼歯にブラケット装着し、wireを延長。第二大臼歯のLevelingが終了した後17ヶ月後からV-loopを組み込んだ.017×.025 ss wireにて前歯の後退を始めた。下顎は上顎の治療開始から7ヶ月後に装置装着。上顎と同様にLevelingを行った。21ヶ月目からClassII elasticを開始した。また、29ヶ月目からはOblique elasticを追加して、上顎前歯部の後退と緊密な咬頭嵌合、Midlineの一致を図った。33ヶ月目にマルチブラケット装置を撤去し、上下顎に取り外し式のリテーナーを装着した。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
治療前後の比較(セファロの重ね合わせ)
動的治療中下顎の前下方への成長があった。動的治療終了後は下顎のより前方への成長が続き、下に凸の前方成長が見られた。動的治療後も続いた成長により、咬合は良好のまま維持されており、歯軸も安定していることから動的治療の開始時期は至適であったと思われる。
成長期上突咬合症例の矯正治療は下顎の成長スパートに乗れるか否かが鍵を握ると言っても過言ではない。本症例は前方への成長が予測できたが、下方成分の成長量が多い場合はより難しくなることが予想される。矯正治療は治療前の診断(読み)がとても重要であるということである。
・治療前後保定後のS−SNでの重ね合わせ(黒線は14歳1ヶ月、赤線は17歳0ヶ月、緑線は20歳5ヶ月)
・治療前後保定後の上顎/下顎/鼻尖での重ね合わせ(黒線は14歳1ヶ月、赤線は17歳0ヶ月、緑線は20歳5ヶ月)
治療結果
上顎にマルチブラケット装置を装着。上顎先行で治療を開始した。.012 round ss wireからLevelingを始め、7ヶ月目に.016 round ss wireにcoil springを用い犬歯遠心移動を行った。12ヶ月後に上顎第二大臼歯にブラケット装着し、wireを延長。第二大臼歯のLevelingが終了した後17ヶ月後からV-loopを組み込んだ.017×.025 ss wireにて前歯の後退を始めた。下顎は上顎の治療開始から7ヶ月後に装置装着。上顎と同様にLevelingを行った。21ヶ月目からClassII elasticを開始した。また、29ヶ月目からはOblique elasticを追加して、上顎前歯部の後退と緊密な咬頭嵌合、Midlineの一致を図った。33ヶ月目にマルチブラケット装置を撤去し、上下顎に取り外し式のリテーナーを装着した。
治療経過 Progress
保定 After Retention or During Retention
治療後の後戻り防止のために床タイプの保定装置は2年6か月使用した。写真はマルチブラケット装置撤去から41ヶ月後の保定終了後のものである。咬合はより緊密になり、極めて安定している。8⏉, 8⏊8については抜去を指示している。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
咬合分類とコメント | 上突咬合、上突歯列、叢生歯列弓 |
||||
---|---|---|---|---|---|
抜歯部位 |
|
||||
治療開始時年齢・性別 | 14歳1ヵ月 ・ 男性 | ||||
動的治療期間 | 2年9ヵ月 |