上突咬合症例
治療担当者:長沼 一雄 矯正歯科さくらぎクリニック
治療前 Before Treatment
顔貌
口腔内
治療後 After Treatment
顔貌
口腔内
治療前 Before Treatment
治療方針
主訴は上の歯がでていること。治療目標は上突咬合、過蓋咬合、叢生歯列弓の改善。下顎の成長方向は前方よりは下方成分優位であるが、成長期であるため、ある程度成長量があると予想され、下顎第二小臼歯を抜歯するかどうか考えた。
臼歯、犬歯関係は、左側は咬頭対咬頭を超えるAngle Class II、右側はFull Cl IIであった。上下顎の前後的位置関係のずれは大きいが、軟組織の不調和はそれほどでもない。適正なオーバージェットを獲得することによって、プロファイルの改善が望めそうである。下顎の叢生が軽度で、かつ下顎第二大臼歯が萌出できそうだった。
以上の所見から、両側上顎第一小臼歯を抜歯、下顎は非抜歯で治療し、叢生の改善と上顎前歯を後退させることにより、上突咬合を改善することとした。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
治療後 After Treatment
治療経過 概要
患者さんは上の歯が出ていることを主訴に来院された。
上顎第一小臼歯を抜歯して治療を行った。
上顎は叢生の改善と前歯の後退した。
下顎は若干の歯列拡大を行った。
下顎第二大臼歯は萌出し、緊密な咬合と良好なプロファイルを獲得することができた。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
治療前後の比較(セファロの重ね合わせ)
・治療前後保定後のS−SNでの重ね合わせ (左図)
(黒線は10歳11ヵ月、赤線は13歳9ヵ月、緑線は15歳11ヵ月)
・治療前後保定後の上顎/下顎/鼻尖での重ね合わせ (右図)
(黒線は10歳11ヵ月、赤線は13歳9ヵ月、緑線は15歳11ヵ月)
治療結果
上顎骨はわずかに下方に移動した。下顎骨は下顎骨体に比べて下顎枝の成長が認められた。下顎骨の成長方向は前下方で下方成分が優位であった。上顎前歯は圧下しながら舌側傾斜移動し、上顎大臼歯は近心移動した。下顎枝の成長量と比べて、大臼歯の垂直的な動きはほぼ同等、下顎前歯の垂直的な動きは小さいことから、下顎前歯が圧下していることがわかる。下顎前歯は前後的にはほぼ変わらない。上顎前歯が後退し適正なオーバージェットが獲得されたことと鼻が高くなったことから、良好な側貌となった。しかし成長量が思ったよりあったため、下顎第二小臼歯を抜歯したとしても、同等の結果が得られたと思う。
保定中は骨格的には変化なく、上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の挺出が認められた。
治療経過 Progress
動的治療開始時:
マルチブラケット装置を装着し、上顎に.014ニッケルチタンワイヤー、下顎に012ステンレススチールワイヤー(以下ss wire)を装着し第一大臼歯までのレベリングを開始。上下顎の咬合関係から、両側下顎第二小臼歯、右側下顎犬歯は、ブラケットポジションが深くなるため、ブラケット装着を見送った。
動的治療3ヵ月後:
上顎に.016ss wireを装着し、パワーチェーンにて上顎犬歯の遠心移動を開始。下顎は.012ss wire。
動的治療6ヵ月後:
上顎に.017×.025ss wireに、バーティカルクロージングループを組み込み装着し、上顎のコンソリデーションを開始する。下顎は.016ss wire。右側下顎犬歯にブラケットを装着した。
動的治療9ヵ月後:
下顎第二小臼歯にブラケットを装着し、下顎のレベリングを行った。上顎はコンソリデーションを継続。
動的治療10ヵ月後:
上顎前歯部にトルクを効かせたいため、上顎に.018×.025ss wireに、バーティカルクロージングループを組み込み装着し、上顎のコンソリデーションを続ける。
動的治療14ヵ月後:
下顎に.017×.025ss wireのidealarchを装着。上顎のトルクが効くのを待つため、上顎のコンソリデーションを一時中断。
動的治療17ヵ月後:
上顎に.018×.025ss wireのidealarchを装着。下顎は.017×.025ss wireのidealarch。
動的治療18ヵ月後:
上顎犬歯にk-fookを装着し、顎間二級ゴムの使用を開始する。
動的治療21ヵ月後:
両側下顎第二大臼歯にチューブをボンディングし、上下顎に上.016ss wireを装着し、再レベリングを行う。
動的治療25ヵ月後:
下顎に.017×.025ss wireのidealarchを装着。上顎は.018×.025ss wireのidealarch。写真にはゴムをかけていないが、顎間二級ゴムの使用している。
保定 After Retention or During Retention
マルチブラケット撤去後26ヵ月で保定装置は撤去した。前歯がわずかに移動し、被蓋はやや深くなったが、咬合に大きな変化はない。下顎第三大臼歯の抜歯を勧めている。保定装置撤去後も後戻りしないか観察が必要である。現在も通院中。
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セファロ
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患者情報
咬合分類とコメント | 上突咬合 過蓋咬合 上突顎 叢生歯列弓 | ||||
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抜歯部位 |
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治療開始時年齢・性別 | 10歳11ヵ月 女性 | ||||
動的治療期間 | 2年5ヵ月 |