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矯正症例集VII -複合症例 混合症例 歯牙素材不全症例-

矯正症例集VII -複合症例 混合症例 歯牙素材不全症例-1995年 4月発刊 50症例 344ページ

(以下 序文より抜粋)

複合症例・混合症例・歯牙素材不全症例という用語について

これまでの症例集の分類には属しにくい、多岐にわたる症例が本書に集められました。その内容は、
・治療に際して、矯正治療だけでなく他科の治療や処置を含む複合的な治療を必要とした症例
・これまでの形態分類では分類できない、あるいはしづらい形態の不正咬合
・歯牙素材に形態や歯数
などの問題があり、矯正治療上、変則的対応や工夫が必要であった症例、に大別できます。これらの三つのグループは、同じ視点にたった分類ではなく、
・治療の組立て方
・不正咬合の形態
・歯牙素材そのものの問題
とそれぞれに異なったカテゴリーにあるものです。しかし、いずれも通常の矯正治療ステップに工夫や応用を必要とする、いわば応用症例という点で共通しています。
矯正の症例はどれをとっても同じものではありません。厳密に言えばすべての症例はそれぞれ独自の治療ステップを辿るものですが、それでも、ほぼ一様の流れがあるものです。しかし、先の三つのグループに属する症例は、治療の組み方やゴールの設定の仕方によって全く異なる治療内容となることがあります。したがって、それらの症例の中にそれぞれの矯正医の考え方や特徴をみることができます。

この症例集のタイトルを冠するにあたり、用語の不足を痛感しました。英語では、このような場合、mutual(相互の、共通の)、miscellaneous(種々雑多な、多方面の)、mutilation(不具、不全)などが使われています。本邦では一部に例がないわけではありませんが、必ずしも適切な用語ではないように思えます。
矯正臨床を行う立場からすると、先のカテゴリー分けされた症例把握は臨床的異義があり、それぞれを表現する用語の必要性を感じます。そこで、今回、複合、混合、歯牙素材不全、という用語を使わせていただきました。その内容は次のとおりです。

『複合症例』
治療を行う際、単科の対応のみでは治療目標に到達することができず、他科との協力や複数の処置が必要な症例。矯正治療と外科、矯正治療と補綴など、複合的処置あるいは複合治療が必要な場合など
『混合症例』
形態的分類のいずれか一つの分類枠に収めにくい状態の症例。いわば各種の不正咬合の混在形、すなわち混合不正の症例。
『歯牙素材不全症例』
歯数の異常や、歯牙形態の異常など、歯牙素材そのものが通常とは異なり、矯正治療上それらの影響を受けるような症例。

1995年 1月
与五沢 文夫