研究大会報告
第32回与五沢矯正研究会報告
第32回与五沢矯正研究会は、有松会長の強力なリーダーシップのもと、関門海峡に面したレトロな雰囲気のあふれる町、門司にて行われました。
今回の研究会は、第30回の沖縄記念大会で与五沢先生が示された、「適応」の概念と保定後の再不整の解明に少しでも近づきたいという思いで企画しました。 研究報告では、モノグラフ30巻で与五沢先生が「適応」を理解する糸口として挙げられた、「個体発生と適応の関連性」や「生体に備わった hierarchy秩序」に焦点を当てた会員発表が4題、保定後の再不整に対する考え方を整理するために「矯正治療のその後から考える」というテーマで7題の会員発表を行いました。
また、九州歯科大学で長きに渡り矯正臨床に携わってこられました藤田邦彦先生から、矯正治療患者と正常咬合者の長期に渡る観察結果について講演して頂く機会にも恵まれました。
「適応」、そして保定後の再不整という大きなテーマを一朝一夕にクリアー出来るものではありません。しかし、研究会でそれに挑み続けることで少しずつイメージが出来上がっていくのではないかと考えておりますし、今回の大会が、我々の進むべき方向を決める契機となったのではないかと思います。
また、症例呈示では、出来る限り保定後の症例の呈示をお願いし、計測項目や呈示方式などを新たに統一して行いました。この試みも、今後継続して行い、保定後症例に数多く触れることでイメージを養い、治療の質を高めていけたらと考えています。
さて、本研究会は、昨年度からオープン参加枠やアフィリエイト会員などの制度を新設し、若手に対する与五沢エッジワイズシステムの伝承を進めてまいりました。そして、今大会では、20名以上の方がオープン参加者として大会に参加され、また、アフィリエイト会員としての入会者5名を初めて当会に迎えることとなりました。
若手の参加により活気のある大会となるのは大変嬉しいのですが、若手にいきなり「適応」というテーマをぶつけるのも無理があります。また、矯正に関する知識を幅広く吸収したいと思っている若手も多いのではないかと思います。そこで、与五沢先生とも相談した結果、まず手始めとして今大会から前日セミナーを開催することに致しました。この前日セミナーは、若手会員の勉強の場としてだけでなくベテラン会員の再確認の場となることも開設の目的です。今大会では、森田修一先生と八巻正樹先生にご協力頂き、「症例の評価方法(症例の重ね合わせについて)」と「症例呈示におけるデジタル情報の処理法(パソコンでの指導)」の2つのセミナーを開催しました。参加者からの評価は高く、継続を望む声が多いことから、澤端喜明先生に担当役員をお願いし今後も継続していくこととなりました。この前日セミナーも色々な形に発展させていけたらと考えております。興味のある方は、ぜひ横浜での第2回前日セミナーにご参加ください。
以上のように、与五沢矯正研究会も日々変化しておりますが、会員の矯正臨床にかける熱い思いだけは不変です。お近くに与五沢矯正研究会に興味をお持ちの方がおられましたら、一度大会に参加して頂き、じかに研究会の熱気を感じて頂けたらと思いますので、参加を呼びかけて頂ければ幸いに存じます。 それでは、来年、横浜でお会い出来るのを楽しみにしております。
第32回副会長 池 元太郎
- 日時
- 2010年4月18日(日)・19日(月)・20日(火)
- 会場
- 門司港ホテル(北九州市門司区)
前日セミナー (18日) |
「症例の呈示方法」症例の評価方法(症例の重ね合わせについて) | 森田 修一 | |
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症例呈示におけるデジタル情報の処理法(パソコンでの指導) | 八巻 正樹 | ||
第1日目 (19日) |
基調講演 (司会進行:池 元太郎) 「矯正治療のその後」から |
有松 稔晃 | |
特別講演 (司会進行:有松 稔晃) 矯正治療後および正常咬合者の長期観察 |
藤田 邦彦 | ||
講演1「隠された秩序を求めて」 (司会進行:有松 稔晃) |
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1-1 発生学組織学見地から読み解く隠された秩序 | 廣島 邦泰 | ||
1-2 上突咬合の一期治療(H/G)から読み解く隠された秩序 | 星 隆夫 | ||
1-3 下突咬合の一期治療から読み解く隠された秩序 | 池 元太郎 | ||
1-4 顔面の非対称性を考える ~偏位咬合・偏位顎の構造となりたち、およびその矯正~ | 濱嵜 広二朗 | ||
講演2「矯正治療のその後」から考える (司会進行:池 元太郎) |
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2-1 矯正治療後の長期経過についての文献レビュー | 竹山 雅規 | ||
2-2 新潟大学における長期症例から | 森田 修一 | ||
2-3 模型の変化からみる隠された秩序 | 妹尾 葉子 | ||
2-4 後戻りについて考える | 三瀬 駿二 | ||
2-5 再治療をおこなった症例から | 夕田 勉 | ||
2-6 治療後の変化:成人開咬合症例保定後10年の変化を中心に | 深町 博臣 | ||
2-7 治療後の下顎前歯部の変化から生体のふるまいを考える | 原 省司 | ||
第2日目 (20日) |
シンポジウム (司会進行:有松 稔晃/池 元太郎) 「矯正治療のその後」から・・「隠された秩序」を求めて |