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研究大会報告

第36回与五沢矯正研究会報告

36回与五沢矯正研究会は、大野秀徳会長の地元長野県は軽井沢での開催となりました。今回のテーマは<症例を通して適応を学ぶ~「上顎前突の形」のその後から~>とし、31回大会から続けてきた「矯正治療のその後」に対して考察する流れを継承し、成長発育期の上突咬合症例を集め、適応の観点から治療結果を振り返って考察することでより生体固有のシステムを理解し、そして「最適な形」とはどういうものかを考えてみたいとの趣旨で企画しました。
今回で4回目を数える好評の前日セミナーは、与五沢論文「上顎前突の形」を澤端喜明先生に非常にわかり易く解説していただきました。会場には50名を裕に越える会員が参加し追加の椅子を用意するほどでした。臨床経験の長短にかかわらず知識の確認や新しい知識を得る機会になったと思います。
第一日目の午前中は例年通りの症例呈示。成長期の上突咬合症例が一堂に並ぶ様、それに見入る会員の真剣な眼差しは、研究会ならではの光景でした。午後は、信州大学の栗田浩先生による顎関節内症についての特別講演、そして今回のテーマに関して翌日の研究報告への流れをつくるべく成長発育期上突咬合に関する基調講演2題を行いました。
第二日目の午前中は研究報告を5題発表していただき、演者各々の視点から症例を振り返り、術者がしたこと、生体がしてくれたことを分けて考えることで生体固有のシステムを理解することを試みました。
午後のシンポジウムの時間は、今回の大会をこれからの研究会を担う若い先生へ向けたメッセージ性の高いものにしたいという大野大会長の考えもあり、特別企画を設けました。前半は有松稔晃先生に研究会の成り立ちからものの見方、適応の概念に至るまでの経緯をきれいなスライドを交え解説していただきました。後半はディレクターからこれまでの矯正学の歩みについて、そして特に若い先生に向けた矯正臨床医になるための道筋・学び方についての貴重な話をしていただきました。
大会を締めくくるにふさわしい最後のお二人の話には矯正に対して真摯でありたい、そして純粋でありたいという思いを肌で感じ取ることができ、会員一人ひとりの心に響くものであったように感じました。幸い会期を通して好天に恵まれ、高原の爽やかな風を感じながら、記憶に残る36回研究会となりました。

第36回副会長 樋口 育伸

日時
2014年4月14日(月)・15日(火)
会場
軽井沢プリンスホテルウェスト
日程
前日セミナー
(13日)
「上顎前突の形」-その理解と臨床応用について-を読む 澤端 喜明
第1日目
(14日)
症例提示
特別講演 顎関節症をわかりやすく考える-顎関節内障の進行に伴う顎関節構成組織の適応変化- 栗田 浩
信州大学医学部歯科口腔外科学講座
成長発育期の上突咬合を再考する-「上顎前突の形ーその理解と臨床応用についてー」のその後から- 大野 秀徳
基調講演 異なる成長変化を示した上突咬合症例から適応を考える 樋口 育伸
第2日目
(15日)
研究報告 成長期の上突咬合・過蓋咬合・両突歯列・上突顎の一治験例 大石 めぐみ
成長期の上突咬合・過蓋咬合症例の10年間の治療経過を顧みて 澤田 美穂
上突咬合の一治験例を通し適応を考える 稲見 佳大
上突咬合・下後退顎の一治験例 廣島 邦泰 成長発育期の上突咬合-かえりみの成長分析-を考える 藤田 俊哉
特別企画 与五沢矯正研究会 現在への軌跡 有松 俊晃
矯正学 歩んで来た足跡 あるいは来歴 与五沢 文夫