成長による下顎軟組織の変化を考慮し、上顎のみ抜歯を行なった上突咬合、過蓋咬合の症例
治療担当者:河野 力 こうの歯科
治療前 Before Treatment
顔貌
口腔内
治療後 After Treatment
顔貌
口腔内
治療前 Before Treatment
治療方針
顔貌所見:側貌において、上口唇に突出感がみられる。
口腔内所見:咬合は深く下顎前歯歯冠の2/3を覆っている。正中は下顎が左に3mmシフトしている。前歯歯肉に発赤腫脹あり。
X線所見:パントモで智歯は4本とも無い事が確認できる。PAでは左右のバランスもとれ特記事項は見当たらない。
セファロでは、上顎前歯の唇側傾斜がみられる。下顎はやや後方に位置しているが、下顎枝、下顎骨体のバランスも良く、前下方向への成長が期待できる。上顎骨は前方に位置しておらず、上下顎関係も良好である。軟組織の状態は上顎前歯の唇側傾斜に伴い、上口唇の反転がみられる。下顎口唇に緊張はみられない。
<治療方針>
大臼歯、犬歯の咬合関係はⅡ級であるが、上顎のみの抜歯を選択した診断について考えてみたい。
1)成長による改善も期待できるが上口唇の反転が気になり、改善には上顎の抜歯は必要である。
2)下顎の成長発育は有る事が予測され、成長の方向も前方要素が強いと考えられる。
3)現在軟組織は、強い緊張感はみられないが、今後オトガイが前方に発育した時、口元が変化し “寂しい” 感じになるのは避けたい。
4)上下左右の8番は存在しない。
以上から上下の歯数に違いがでてくるが、軟組織と歯牙のバランスを考えると大臼歯の咬合関係はⅡ級のままだが上顎のみの抜歯で治療を進める事とした。
顔貌
口腔内
セファロ
パノラマ
治療後 After Treatment
顔貌
口腔内
セファロ
パノラマ
治療前後の比較(セファロの重ね合わせ)
治療結果
<症例に対する評価>
下顎犬歯間幅径は23.5mm(初診)→ 25mm(終了時)→ 23.5mm(保定終了)と変化し、下顎前歯にクラウドが発生している。
全体の咬合関係には変化はみられないため、このまま様子を見て行く。上顎のみ抜歯を行なった点については、保定終了時の側貌から判断し、寂しい感じはみられない。上下歯数の違いによる咬合状態は観察が必要である。
治療経過 Progress
<治療経過>
顎外固定の種類:使用なし
口腔内ゴム:class Ⅱ 3か月
standard edgewise法にて通法通り行った。
保定 After Retention or During Retention
<保定装置>
上顎: tooth positioner type (夜間のみ使用)
下顎:3 ~ 3 fixed type
顔貌
口腔内
セファロ
パノラマ
患者情報
咬合分類とコメント | 上突咬合 過蓋咬合 上顎前歯の唇側への傾斜が強く、上口唇の突出感が見られる。 下顎口唇の状態は良好だが、今後の成長を考えた時、口元を下げる矯正力を加えることは術後の軟組織の状態を考えると好ましくないと判断し、上顎のみの抜歯にて治療を行なった。 |
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抜歯部位 |
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治療開始時年齢・性別 | 11歳4か月 男性 | ||||
動的治療期間 | 2年9か月 |