下顎右側第二大臼歯埋伏を伴う両突歯列、叢生歯列弓の症例
治療担当者:廣島 邦泰 アイウエオ矯正歯科医院
治療前 Before Treatment
顔貌
口腔内
治療後 After Treatment
顔貌
口腔内
治療前 Before Treatment
治療方針
叢生を主訴に来院。正貌はほぼ左右対称。側貌は上下口唇が突出し、口唇閉鎖時にオトガイ部軟組織の強い緊張を認めたが、骨格的なバランスは良い。口腔内は臼歯関係アングル I 級で両突歯列、前歯部に叢生を認めた。下顎右側第二大臼歯が近心傾斜により埋伏し、第三大臼歯の歯胚が4本認められた。これらから、叢生および両突歯列、プロファイルの改善を目的に上下顎両側第一小臼歯を抜去し、マルチブラケット装置(ミツバ社製LLブラケット)を用い、上下顎maximum anchorageでヘッドギアとⅢ級ゴムを併用し上下顎前歯を後退させ、下顎右側第二大臼歯の牽引前に下顎右側第三大臼歯の抜去を行う方針とした。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
治療後 After Treatment
治療経過 概要
・上下顎に.018″×.025″ スタンダードエッジワイズ装置(LLブラケット)を装着し治療を開始した。
.012″,.014″,.016″ SSラウンドワイヤーを用いてレベリングを5ヵ月間行った。
・パワーチェーンにて犬歯の遠心移動を上顎2ヵ月間、下顎8ヵ月間行なった。
・下顎右側第三大臼歯を抜去後、下顎右側第二大臼歯にバッカルチューブをボンドし、整直を開始した。
・上顎に.018″×.025″,下顎に.017″×.025″のSS角ワイヤーにV-loopを組み込んで、上下顎前歯の遠心移動を開始し、6ヵ月間行った。この時同時にヘッドギアとⅢ級ゴムも併用した(ヘッドギアは4ヵ月間、 Ⅲ級ゴムは3ヵ月間使用)。
・上顎両側第二大臼歯のコントロールを開始。またパノラマ撮影し、ブラケットのポジションチェンジを行い再レベリングした。この時U & Dゴムを併用した。
・仕上げは上顎.018″×.025″、下顎.017″×.025″ アイディアルアーチを用いて5ヵ月間行い、U & Dゴムを併用した。
・ヘッドギアや顎間ゴムの協力がよく、治療期間の短縮につながった。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
治療前後の比較(セファロの重ね合わせ)
・治療前後のS-SNでの重ね合わせ(左図)
(黒線は11歳9ヵ月,赤線は14歳3ヵ月,緑線は16歳1ヵ月)
・治療前後の上下顎骨および軟組織の重ね合わせ(右図)
(黒線は11歳9ヵ月,赤線は14歳3ヵ月,緑線は16歳1ヵ月)
治療結果
下顎骨の前下方への良好な成長を認め、上下顎切歯の舌側移動、B点の後退、鼻の成長により口唇が後退し、良好なプロファイルが得られた。
口唇閉鎖時におけるオトガイ部軟組織の緊張も解消した。
歯根の平行性は良好で、埋伏していた下顎右側第二大臼歯のアップライトが十分できた。
保定期間中に、上下顎切歯の唇側傾斜を認めたが、下顎骨や鼻の成長があり、プロファイルへの影響はほとんどなかった。
治療経過 Progress
1. 上下顎に.018″×.025″ スタンダードエッジワイズ装置(LLブラケット)を装着し、.012SSラウンドワイヤーを用いてレベリングを開始。
2. パワーチェーンにて犬歯の遠心移動を開始。
3. 下顎右側第三大臼歯を抜去後、下顎右側第二大臼歯にバッカルチューブをボンドし、整直を開始。
4. 上顎に.018″×.025″,下顎に.017″×.025″のSS角ワイヤーにV-loopを組み込んで、上下顎前歯の遠心移動を開始。同時にヘッドギアとⅢ級ゴムを併用。
5. 上顎両側第二大臼歯のコントロールを開始。ブラケットのポジションチェンジを行い再レベリング。U & Dゴムを併用。
6. 上顎.018″×.025″,下顎.017″×.025″ アイディアルアーチを用いて仕上げ。U & Dゴムを併用。
保定 After Retention or During Retention
上顎にBegg type、下顎にFSWリテーナーにて保定を1年11ヵ月間行った。
臼歯犬歯関係 I級の緊密な咬合と良好なプロファイルが維持されている。
歯根の平行性は良好で、下顎右側第二大臼歯の咬合状態も安定している。
残っていた3本の智歯の抜歯をすすめた。
顔貌
口腔内
模型
セファロ
パノラマ
患者情報
咬合分類とコメント | 中立咬合 両突歯列 叢生歯列弓 埋伏歯 | ||||
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抜歯部位 |
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治療開始時年齢・性別 | 11歳10ヵ月 男子 | ||||
動的治療期間 | 2年3ヵ月 |