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マウスピース矯正の危うさ

マウスピース矯正といえば、透明で薄く目立たないことや取り外しができることで、昨今大変人気の矯正治療となってきています。Web上でも情報が溢れていますが、マウスピース矯正にはWebにはあまり上がってこない、まだまだ十分検証されていない不透明な部分があることをご存じですか。そして、歯科矯正医の間でもマウスピース矯正に疑問を持っている方は多く存在します。
日本には矯正歯科関連の学会がいくつかありますが、よくホームページを見ていくとマウスピース矯正に諸手を挙げて賛成していないところも複数あります。Yogosawa Foundationでもマウスピース矯正については賛成していません。

主に

  1. 経験の少ない歯科医師がマウスピース矯正で治療を始めてしまう
  2. 適応できない症例がある
  3. 十分な検証ができていない

以上3つの理由があるからです。

経験の少ない歯科医師が簡単に始められるマウスピース矯正

マウスピース矯正が危うい理由の1つは「歯科医師の経験が浅くても簡単にマウスピース矯正が始められてしまう」ということです。経験の浅い歯科医師が治療計画なしに矯正を始めてしまう、もしくは患者さんの口腔内を診たこともないマウスピースメーカーが治療計画を作ってしまうから危ういのです。

本来、歯科矯正の技術は習得に大変時間がかかるものです。
歯科の大学だけでは十分に習得できるとは言い難く、一人前の歯科矯正医になるためにはその後も研鑽が必要になります。しかし、経験が十分ではなくても経営上の理由から、新たな患者さんを獲得する目的や、大きな収入を得られるからという理由で矯正治療をやりたいと考える歯科医師は多数存在します。

マウスピース矯正が登場する以前はそう望んでも現実的ではありませんでしたが、現在ではコンピューターがゴールまでシミュレーションしてくれ、歯科医師はただメーカーから送られてくるマウスピースを患者さんに渡していくだけのマウスピース矯正のシステムがあるのです。
一人ひとり異なる個性のある生体相手の治療にも関わらず、コンピューターのシミュレーションにお任せでは最後までうまくいくとは限らないのは当然のことです。

ただ、うまくいかなくなった時に、リカバリーできる技術を歯科医師が持っていればまだ何とかなるかもしれません。しかし、リカバリーに使う矯正方法は、結局ブラケットとワイヤーを使ったワイヤー矯正なのです。しかも、最も正確に矯正ができる方法がスタンダードエッジワイズ法なのです。

あらゆるリスクを含んだマウスピース矯正をご検討される場合は、結局、ワイヤーとブラケットを使った方法を使うことになるかもしれないこと、また、状態によっては最初からワイヤー矯正とマウスピース矯正を合わせた方法を提示される可能性があること、さらに、せっかく「目立たない」マウスピース矯正を行ったにもかかわらず、保定期間に使用するリテーナー(保定装置)がワイヤー製の歯科医院もあることを知っておくべきです。
保定期間は以外に長いものです。

マウスピース矯正で思うようにいかなくなったら 結局、ワイヤー矯正でリカバリーするしかありません。 しかも、最も正確に仕上がるのがスタンダードエッジワイズ法なのです。

マウスピース矯正には適応できない症例があります

マウスピース矯正は万能ではありません。マウスピース矯正は主に簡単に治療できる症状向けに作られています。
「前歯を少しだけ移動したい」「ちょっと空いた隙間を閉じたい」など大きな移動を伴わない症例が基本的に対象となっています。

ご本人は「前歯だけ」と思っていても、歯科矯正医から見ると、例えば「奥歯が倒れていて前歯を移動させると咬み合わせに問題が生じる可能性がある」など、別の問題をはらんでいる場合も十分考えられますので、ご自身で“自分の症状ならマウスピース矯正ができるだろう”と安易に考えないでください。
まずは、信頼できる歯科矯正医に相談してみることが重要です。
もし、あまり詳しくない歯科医師にご相談された場合、そこまで見抜くことができずに治療を開始してしまう可能性もあります。
また、患者さんが「絶対マウスピースでやりたい」と決めていらっしゃった場合、歯科医師側が無理をしてどうにか治療しようとするようなケースもあります。
そういった無理があると、結局、治療結果に全てが反映されてしまい、患者さんが望んだ結果を得られないということになってしまいます。

また、あごの移動など骨格に関連した矯正治療や口唇口蓋裂など外科手術を含む治療はマウスピースではできません。
マウスピース矯正には様々な限界があることを知っておいてください。

マウスピース矯正はまだ十分検証されていない技術です

マウスピース矯正をされた方の中に、うまく咬み合わないという方がいらっしゃる場合があります。
まだ原因など十分検証されたわけではありませんが、そういったことがあると知っておくことは矯正を失敗しないために重要です。

マウスピース矯正には、スタンダードエッジワイズ法(ワイヤー矯正)と根本的に異なることが一つあります。
それは「歯列全体を覆う」ということです。
歯列全体を覆うということは、上下の歯列が咬み合う時にマウスピースが間に挟まるということです。
ワイヤー矯正では、矯正治療中に上下の歯列の間に異物が挟まるということはなく、生の歯と歯が咬み合う状態で治療が進みます。

スタンダードエッジワイズ法
マウスピース

マウスピース矯正では横方向の移動や、高さを合わせる移動が意図的になされていきますが、意図した通りに歯が動くかどうかは、現在のところ明確なエビデンスは示されていません。特に、マウスピース矯正で歯の捻転(※1)、近心傾斜した臼歯(※2)の整直や低位の歯の挺出などの改善はうまくいきません。

※1歯の捻転・・歯のねじれを整えること。
※2近心傾斜した臼歯・・前方に向けて傾斜した奥歯

矯正治療に使用するマウスピースの厚みは、おおよそ0.5mmです。
上下の歯列にはめると、1mmの厚さになります。
上下の咬み合わせが1mm変わると、生体にとっては大きな変化です。
マウスピース矯正は咬み合わせの治療を行っているのにもかかわらず、装着すると上下の歯は接触しなくなります。しかしながら、装着していないと歯は動きません。マウスピースはある意味矛盾を孕んだ装置です。

もしかすると、他にもまだまだ表には出てきていない問題が含まれている可能性があります。
歯科専門の弁護士によると、マウスピースに関連する相談は、近年増え続けています。
未検証の部分を多く残したマウスピース矯正について、諸手を挙げて賛成できるはずはありません。
まだ普及して年数の浅いマウスピース矯正は、今後どのような問題が起こってくるのか誰にもわからないのです。

マウスピース矯正は、咬み合わせに問題が出る場合があります。 私たちは信頼できない治療方法を勧めるわけにはいきません。

「歯並び」は一生付き合うものだからこそ信頼できる歯科矯正医を頼ってください

矯正を始められる方は、金額や矯正期間への関心は高いものの、その品質については、安価であったり治療期間が短かったりすればするほど心のハードルが下がり、正しい知識を得ることやより良い歯科矯正医を探す努力を怠ってしまう方が増えるようです。
特に、若い方にとっては目立たないことや安価であることは大変魅力的で、そのような広告に目が行きがちでしょう。
ですが、本当によく考えていただきたいのは、「歯並び」とは一生付き合うものであり、毎日毎日、四六時中あなたの生活に影響を与え続けるものだということです。また、歯並びは社会生活にも影響を与えています。
歯並びだけでなく、咬み合わせの機能に問題がなく、自然な状態で口を閉じることができる「口元の美しさ」という品質を重視しなければ、歯並びだけでなく、咬み合わせの機能に問題がなく、自然な状態で口を閉じることができる「口元の美しさ」という品質を重視しなければ、四六時中受ける歯並びからの悪影響が、あなたの体の負担になってしまう可能性があります。

失敗矯正があること、安易な気持ちで矯正治療を行っている歯科医院があることなどお伝えすることは、同じ歯科矯正医として大変心苦しい内容ですが、よく知っていただくことが患者さんの利益になると私たちは信じ、情報を発信しています。
そして、治療に責任を持った歯科矯正医に出会っていただきたいと心から願っています。

マウスピース矯正には様々な危うさがあります。治療に責任を持ち、スタンダードエッジワイズ法を行えるほどの技量を持った歯科矯正医に出会って、より良い治療を受け、より良い結果を得てください。

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