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歴史ある信頼と実績の技術

約100年使われている矯正技術スタンダードエッジワイズ法

Dr. TweedDr. Tweed(1895-1970)
与五沢ディレクター撮影(1967年)

1920年代、スタンダードエッジワイズ法の源流となるエッジワイズ法がアメリカの歯科医師E. H. Angleによって開発されました。
そして、Dr. Angleと共にエッジワイズ法を発展させたDr. Tweed(写真)が、スタンダードエッジワイズ法の基礎を築きました。

1972年、与五沢ディレクターはアメリカから持ち帰ったスタンダードエッジワイズ法の術式を公開し、1979年には後の与五沢ファウンデーションの核となるスタディグループ「与五沢矯正研究会」が設立されました。
以来、約半世紀にわたって、日本におけるスタンダードエッジワイズ法の臨床結果から数多くのことを学び、常に臨床の質を高める努力を続けてきました。

Dr. Tweed Dr. Tweed(1895-1970)
与五沢ディレクター撮影(1967年)

参照元:与五沢文夫著 『矯正臨床逍遥』 2020年

エッジワイズと抜歯・非抜歯論争の歴史

スタンダードエッジワイズ法を説明する上で避けて通れないのは「抜歯、非抜歯」の論争だと思います。
実は、この論争は100年以上前にもあったもので、既に決着した問題とも言えるのですが、100年の時を経てもまだ議論されています。

抜歯・非抜歯論争は100年前に決着している?

歯科矯正の歴史において、1911年に「抜歯論争(Extraction debate in 1911)」という抜歯vs非抜歯の論争がありました。当時はAngle派の非抜歯治療が一般的に支持されていましたが、その14年後の1925年に「歯槽基底論」という論文が発表されます。
この論文により「矯正治療で骨(歯槽基底)の根本的な大きさや形を変えることはできない」、また、「歯槽基底を超えて移動された歯は後戻りする」との研究結果が提出され、非抜歯にこだわる治療が無理なことが明らかになりました。

この論争において、非抜歯派のDr. Angleと対峙していたDr. Caseは「熟慮の結果なら抜歯もやむを得ない」と言っています。

エッジワイズ法を開発したDr. Angleは非抜歯派だった?

エッジワイズ法を開発したDr. Angleは、当初、必要があれば抜歯するというスタイルで治療を行っていたものの、1903年以降に非抜歯派になっていました。
元々、補綴学の教授であったことや、宗教的に神から与えられた32本の歯を使わなければならないと考えたことが「必要なら抜歯する」から「全て非抜歯で治療する」というスタンスに変わった原因かもしれません。

Dr. Angleは1930年8月11日に亡くなりますが、全ての症例を非抜歯で行うという治療のスタンスには無理があり、弟子たちが行った矯正治療では「馬面」になってしまう患者が多発したようです。

Angleの愛弟子Tweedが非抜歯の「馬面」症例を抜歯にて再治療

Dr. Tweedは、当初、Dr. Angleの「決して抜歯してはならない」という教えに従い、非抜歯で矯正治療をしていましたが、「馬面」症例になってしまう治療結果に満足していませんでした。
そして、Dr. Angle没後の1940年に「抜歯による矯正の再治療100症例」を発表しました。これ以降、Dr. Angleの他の弟子たちも抜歯の必要性を再確認し、必要であれば抜歯を行うという基本的かつ重要な考え方に帰着していったようです。

師匠のDr. Angleの非抜歯治療に背き、抜歯による再治療を行ったDr. Tweedはこう言いました。
“Just put your plaster on the table,…Let the treatment speak for itself.”
(石膏模型を机の上においてごらんなさい…。その症例が物語っています)

抜歯論争に関する歯科矯正医の相関図 抜歯論争に関する歯科矯正医の相関図

日本矯正歯科専門医名鑑「抜歯か非抜歯かー矯正治療における抜歯問題の是非
歯科医学大辞典[縮刷版] 医歯薬出版株式会社 2001年 P1194、P2022、P2023

現代における失敗矯正

歯科矯正医が「抜歯が必要な症例」と判断しても「患者さんが強く希望する」という理由から、非抜歯で治療をする場合があります。患者さん自身が「馬面」矯正になってしまうことを理解して治療を開始されるなら良いのですが、十分な説明なく非抜歯で治療をする歯科矯正医もいます。

Yogosawa Foundationでは、歯科矯正医が「抜歯が必要な症例」と判断したにも関わらず、患者さんが「非抜歯治療」を希望した場合には、十分に抜歯の必要性をご説明しますが、ご理解いただけない場合は治療をお断りすることもあります。
歯科矯正の歴史を通して患者さんにご理解いただきたいのは、矯正治療は歯並びをきれいにするだけでなく、美しい口元を追い求めることでもあるということです。

失敗矯正例一覧

“歴史は繰り返す”と言われますが、今も「絶対に抜かない矯正」や「取り外しできる最新の矯正治療」など、治療を受ける患者さん側からすると聞こえの良い広告を多く目にします。しかし、現実は「単に歯を並べただけ」というような治療目標の低い矯正治療がはびこっています。
特に問題なのは、治療結果のレベルが低い技術とわかっているのにもかかわらず、経営的な理由で上述のような広告をする歯科医師がいることです。

患者さんは広告に惑わされず、治療を任せようと思う歯科矯正医の治療症例を確認していただき、治療レベルを見抜く力を持っていただきたいと切に思います。

本来は、私たち歯科矯正医が患者さんに安心して矯正治療を受けていただける環境を整えるべきですが、現行の法制度においては「歯科医師であれば誰でも矯正治療ができてしまう」という問題があるため、患者さんご自身の目を肥やしていただくべく、本サイトなどを通して啓蒙活動を続けています。

矯正歯科医院の選び方

歴史の浅いマウスピース型矯正治療

現在、日本でも広がりを見せているカスタムメイドのマウスピース型矯正装置(アライナー型矯正装置)による治療は、それほど長い歴史があるわけではありません。マウスピース型矯正装置の代表格である「インビザライン」は、1997年に米国にてアライン・テクノロジー社が設立され、1999年より米国で治療が始まり、日本では2006年にようやく開始されました。

アライナーを装着して歯列を整えるマウスピース型矯正治療は、軽微な歯並びの治療であれば有効な治療法の一つです。治療における主役はあくまでも患者さんであり、どのような治療法でも患者さんの利益に繋がる「治療の目標(ゴール)」に到達できるならば、テクニックは何でも構わないともいえます。
しかしながら、実際の治療の現場では、無謀なマウスピース型矯正治療、無理な非抜歯治療などで、多くの患者さんが辛い思いをされているのも事実です。

マウスピース矯正の危うさ

視力矯正レーシック手術も今は危険?

2000年代に流行した視力矯正レーシック手術。記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?
角膜にレーザーをあてて視力矯正するレーシック手術は、日本では2000年に厚生省(現 厚生労働省)が機器を認可して、皆が手術を受けられるようになりました。手術者数は、最盛期には年間4~50万人に上りましたが、数々のトラブルから2013年に国民生活センターが注意喚起を行い、現在ではレーシック手術を中止している医院も多くあるようです。
このように歴史が浅い医療は長期に渡る安全性が実証されていないため、たとえ一時的に異常な盛り上がりをみせていたとしても、身体に関わる医療だからこそ冷静に見つめて判断すべきです。
医療においての歴史は、他の分野のそれとは比べものにならないほど重要な要素です。

スタンダードエッジワイズ法は、医療として確立された歴史も長く、さまざまな症例に対応できるテクニックであり、患者さんにとって利益のある治療法です。
「医療はできる限り患者さんごとであるべき」との考えから、矯正治療法にフルオーダーメイドが可能なテクニックがある以上、患者さんには是非選択していただきたいと思います。