抜歯・非抜歯のポイント
抜歯治療する歯科矯正医と非抜歯で治療する歯科医師
なぜ、同じ歯科医師なのに「抜歯しないと矯正治療できない」と言う歯科矯正医と「非抜歯で矯正治療できる」と言う歯科医師がいるのでしょうか?
患者さんからすれば当然、非抜歯で矯正治療できるほうが良いに決まっています。
では、なぜそのような違いが生じるのでしょうか?
その要因の一つに、ゴール(治療目標・結果)の違いがあげられます。
私たちは、歯並びを美しくするだけでなく、口元の美しさ(顔貌)も重要視します。
矯正治療は、いわば「創造の医療」ですが、美容整形のように人工的な美しさを追い求めるのではなく「自然体で健康的な口元の美しさ」を追求します。
少し大げさに言えば「美しくならなければ矯正治療を行う意味がない」と考えていますので、どうやったら患者さんの健康的な美しさを引き出せるかを常に考えています。口元の美しさを考えて、患者さんにとっては避けたい抜歯も、私たちは勧めることを躊躇いたしません。
一方で一般歯科の歯科医師は、補綴といって、虫歯治療に代表されるように歯をできるだけ残すこと(温存治療)に人生をかけている歯科医師もいますから、ゴール(治療目標・結果)は口元が美しくならなくても、できるだけ「抜歯しない」で歯並びだけを良くする矯正治療を行おうと考える方もいらっしゃいます。
一般論ですが、このゴール(治療目標・結果)の違いが患者さんたちを惑わし、結果として失敗症例が発生するものと推察できます。
いうまでもなく、歯科矯正の治療技術レベルが低い、もしくは知識や経験の不足で治療結果を出せない、または治療ゴールを低く設定するというような歯科医師がいることは論外です。
あなたが矯正治療を行う目的の一つに「美しくなりたい」という目的があるのであれば、是非、ご自身で矯正治療についての知識を得てください。
そして、充分納得された上で矯正治療を始めていただくことが、あなたの人生により良い結果をもたらすと思います。
~Yogosawa Foundationのゴール(治療目標・結果)は?~
矯正治療は単に歯並びを良くすること『だけ』が矯正治療のゴールと考えている歯科医師もいますが、 Yogosawa Foundationでは 「歯並びを良くするだけでなく、全体の咬み合わせや口元(顔貌)を美しくする!」ことが、好ましい矯正治療の目的、ゴールであると考えています。
「歯並びを良くすることだけ」が矯正治療と考えている歯科医師もいます
日本国内では、歯科医師免許があれば誰でも矯正治療を行うことが可能です。
ですから、大学で歯科矯正の知識を得たレベルしかないのに、実験的に患者に矯正治療を施すような歯科医師がいることも事実です。
矯正治療の勉強をほとんどしていない未熟な技術レベルの歯科医師が、経営に困ったからという理由で、また、実験的に患者さんに治療を施すようなことは、歯科医師云々の前に人としてあってはいけないことです。
Yogosawa Foundationでは、そのような矯正治療の現状や教育システムに大変な危機感を感じるとともに、このような歯科医師のもとで患者さんが治療を開始しないよう、患者さんにはしっかりした歯科矯正の知識を得ていただきたいと考えています。
「非抜歯で治療してダメなら抜歯しましょう!」という歯科矯正医はプロなのか?
プロの歯科矯正医の中にも「非抜歯で治療してダメなら抜歯しましょう!」と言う歯科医師がいます。
患者さん側からすると「非抜歯で治療してダメなら抜歯しましょう!」と言う歯科医師は、患者想いの良い先生と感じることでしょう。しかし、本当にそうでしょうか?
医学的見地においては、矯正の動的装置をつけて歯を移動する期間が長くなると「歯根吸収」といって歯の根が短くなるリスクがより高まる可能性があります。
そのリスクを承知で「非抜歯で治療してダメなら抜歯しましょう!」と言う歯科矯正医は、治療者としていかがなものかとYogosawa Foundationでは考えます。
非抜歯で治療をしてもうまくいかないことが目に見えているケースで、患者さんから抜歯の同意が得られないのであればお断りするぐらいの気持ちで治療に当たるのが、責任を持った歯科矯正医の態度ではないでしょうか。
嘆かわしいのは「非抜歯で治療しても、患者さんが次に抜歯で再治療を希望するであろう」と歯科矯正医自身がわかっているのに、経営的・経済的に患者さんが欲しいという理由で治療を開始してしまう歯科矯正医がいることです。
Yogosawa Foundationでは 本当の矯正のプロであれば、患者さんに ・抜歯、非抜歯で治療した場合の結果 ・事前説明による治療期間 ・歯根吸収のリスク など、マイナス的なことも含め十分に説明し、理解を得て 最短の治療期間で最善の治療結果を残すこと が肝要であると考えます。
なぜ抜歯がそれほど必要なのか
上記の図を見てください。
簡単に解説すると、でこぼこに並んだ歯をきれいに並べるための治療方法を示していますが、問題は歯のサイズと歯槽基底(歯が並ぶ土台)のサイズのアンバランスです。
- 抜歯による矯正治療
- 歯列拡大(非抜歯)―歯列を前に拡大した場合
- 歯列拡大(非抜歯)―歯列を横に広げた場合
- 歯を削る治療(非抜歯)
抜歯によってスペースにゆとりが生まれ、口元を後ろに下げたり、出っ歯をきれいに並べることができるようになります。
スペースにゆとりがないため、前に突出するより他ありません。
横に広げたことで咬み合わせが不安定になる可能性があり、横方向だけではなく、前方向にも拡大してしまいます。
口元を引っ込めるためのスペースの確保ができないことや、歯を複数本削るため、虫歯のリスクが高まります。
図を見ていただければ一目瞭然ですが、矯正した際に歯が並ぶだけのスペースがしっかり確保されることが、美しい口元の実現や、安定した咬み合わせなど、快適な歯並びを手に入れるための重要な条件です。
ほんの少し歯を動かすだけで良い治療でしたら非抜歯でも可能かもしれませんが、多くの場合、歯を並べるためのスペースを確保することが矯正治療を行う上では大切になってきます。
無理に非抜歯矯正を進めると歯肉退縮により歯が露出してしまったり、ひどい場合には歯が骨から飛び出してしまった例もあり、非抜歯にこだわることが長い歯とのお付き合いの上で本当に大切なのか、よく考えていただきたいと思います。
歯がでこぼこに並ぶのは生体にとっては“問題”ではなく“解決策”なのです
通常、歯がでこぼこに並ぶことは悪いことと思われがちです。しかし、生体にとっての問題点は並び方ではなく、歯とあごの大きさのアンバランスです。歯の仕事は上下の歯で噛み合って食物を咀嚼することです。きれいに並んで最後の歯が埋伏してしまうより、でこぼこに並んで全ての歯が萌出し噛み合うことを生体が選択したのです。装置を入れれば歯は真っ直ぐに並びます。ですが、アンバランスの問題は解決されていません。ですから「前歯が突出して口唇が閉じにくい」や「歯肉退縮が生じやすい」や「リラプス(後戻り)が生じやすい」などの新しい問題が生じるのです。
もう一度言います。
歯のでこぼこは生体にとって問題ではありません。解決策です。
叢生の改善のために抜歯を行うことは、歯とあごの大きさのアンバランスという問題の解決策になります。
「抜歯する」と患者さんに伝えること・・・
ある歯科医師は非抜歯で治療できると言い、ある歯科矯正医は抜歯で治療すると言う。
患者さんの気持ちになれば、健康な歯を抜かずに矯正治療できるほうが良いのは当然のことです。
Yogosawa Foundationで矯正技術を研鑽している歯科矯正医も本当は「抜歯しないと治りません」とは言いたくありません。抜歯しないで治療できるなら、絶対に抜歯したくありません。
しかし、「口元を美しくする矯正治療」で結果を出すために、責任を持った矯正の治療者として「抜歯する」と伝えなければならない場合があることを患者さんにご理解いただけたら幸いです。