スタンダードエッジワイズ症例
【失敗矯正例3】受け口のまま治療終了の宣告
年齢40歳で歯が移動しませんと言われた!
経験を十分に積まないで矯正治療を行っていると思われる歯科医師の元で矯正治療を行い、受け口が治らないまま治療終了を告げられた患者さんの例です。この患者さんはどうしても諦められず、セカンドオピニオンを求めてご来院されました。
確かに上あご・下あごともに歯並び自体はきれいになっていましたが、装置に頼った治療方針のため、うまくいかなくなった時にどのように見立ててよいのかわからなかったと思われます。このような歯科医師に遭うことなく、是非とも信頼できる歯科矯正医に出会っていただきたいと願っています。
再治療者 | 稲見 佳大 いなみ矯正歯科医院 |
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治療開始時年齢・性別 | 40歳・女性 |
前医での治療装置 | 取り外し式の装置による歯の移動 |
患者さんの症状 | <転院時の撮影>![]() ![]() ![]() 上下の歯列はきれいに揃っていますが、正面の画像の通り完全な受け口で、治療した意味が全くありません。 普通ならば、これから治療を開始します、というところではないでしょうか。 また、前医院では上あごの犬歯を抜歯しており、通常の歯科矯正医としては考えにくい治療です。患者さんには「年齢のせいでこれ以上動かない」と説明し治療を打ち切ったそうですが、患者さんはまだ40歳ですから、そのようなことがあるはずがありません。 |
■前医院の治療の問題点
抜歯部位について
今回の治療で最も問題だったのは、抜歯部位です。
通常このようなケースでは、上下小臼歯、合計4本を抜歯しますが、今回のように上あごのみ2本抜歯とは考えられないことです。きちんと下あごも抜歯していれば下突咬合(受け口)の改善は可能であったはずで、患者さんの年齢のせいにする必要はなかったはずです。
さらに、抜歯されていた上あごの2本は犬歯を抜歯しており、これも考えにくい抜歯部位です。犬歯は歯根が長く頑丈な歯で、咬み合わせにおいて重要な役割を果たすため、基本的には抜歯対象にはなりません。
犬歯の役割について
犬歯は食べ物を咬み切る役割の他に、正常な咬合では前歯や臼歯が必要以上に圧力を受けることがないよう、上下の犬歯が支えになるなどの重要な役割があります。矯正治療で抜歯する際は、特別な理由がなければ抜くことはありません。
■再治療の結果
<転院時>



<再治療終了時>



治療自体は難しいものではありませんでした。
しっかりと訓練と経験を積んだ歯科矯正医であれば易しい部類の治療で、あんなに悩んでいらっしゃった歯がみるみるうちに動き、1年6ヵ月で治療を完了させることができました。
- 受け口が正常な位置へ改善されています
- 奥歯の咬み合わせにも問題ありません
- 正中も合っています
- 上下前歯の咬み合う深さにも問題ありません
(咬み合う深さ2㎜以内、重なり2㎜以内が良いとされています)
この症例から学ぶべきポイント
今回の失敗矯正の原因は前医の明らかな勉強不足でしょう。昨今は経営を考慮して簡単に矯正歯科を始める歯科医師が増えています。マウスピース矯正や床矯正など取り外しできる装置だけを使って矯正治療を行っているところは要注意です。これらは経験がなくても場合によってはどうにか治療らしきものをすることができる方法なのです。しかし、歯科矯正医としての基礎的な力を持ち合わせていない歯科医師が治療を行うと、今回のような事態を招くことになります。
一本一本の歯を歯科矯正医が操作していくオーダーメイドの治療といわれるスタンダードエッジワイズ法ができる程度の実力があり、患者さんの協力が得られれば、ほとんどの症例を治療できます。歯科矯正医をお探しになる際にはどのような治療を行っているのか、確認されることも良いかもしれません。