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スタンダードエッジワイズ症例

【失敗矯正例4】矯正治療で出っ歯になった!?
非抜歯治療による歯のスペース不足で口が閉まらない状態に!

矯正治療を開始してから少しずつ歯列が前に出てきてしまったという患者さんが、セカンドオピニオンを求めていらしたのは1年2ヵ月目のことでした。驚いたことに、矯正治療をしているとは思えない出っ歯の状態で、しかも、もっとも叢生(でこぼこの歯並び)が強く、なかなか動かなかった歯を突然削られてしまったという訴えでした。
本来の歯科矯正医なら、勝手に突然歯を削ってしまうなどあり得ないことです。

再治療者 廣島 邦泰 アイウエオ矯正歯科医院
治療開始時年齢・性別 32歳3ヵ月・女性
前医での治療装置 リンガルアーチ(舌側弧線装置)とマルチブラケット装置(ストレートエッジワイズ)
患者さんの症状 <転院時の撮影>
症例唇が前方に出ています。
症例歯が全体的に前に突出しています。
症例なかなか動かない歯を勝手に削られています。
治療開始後1年2ヵ月が経過した時点で、前医院を不信に思い、セカンドオピニオンを求められた時の状態です。驚くべきは前歯の突出が発生し、顔貌の状態が悪化していることです(横顔の写真を見ると自然な状態で口を閉じることができなくなっています)。
口を閉じる時は、梅干しのようにしわが寄ってしまう状態でした。
しかも、治療でなかなか動かなかった前歯を1本突然削られ、不信が決定的になったそうです。

■矯正治療をなにも行っていない状態(前医院での治療開始前)

症例
症例
症例

歯並びはでこぼこしていますが、前方に突出はしていません。

症例
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1の通り、なにも矯正治療を行っていない時点では前歯は突出していません。

前医院での治療はリンガルアーチ(舌側弧線装置)とマルチブラケット装置(ストレートエッジワイズ)で行われました。
治療に使った方法が悪いわけではありませんが、この前医院の場合はあまり経験がなく、十分な治療計画を立てていなかったか、思うようにいかなくなってリカバリーができなかったかと思われます。

■再治療の検査・診断

再治療にあたり、詳しく検査を行い、治療方針を立てました。

●検査

症例
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症例
症例
  1. 上下ともに叢生(でこぼこ)はきれいになっていますが歯列が全体に前に出ています。
  2. 正中が左側へ1㎜ずれています。
  3. 右側奥歯の咬み合わせが乱れています。
症例

頭部X線規格写真(セファロ)でもやはり前歯が突出していることがよくわかります。

治療方針

無理な非抜歯矯正による歯列拡大のため、突出してしまった歯列・ずれた正中・叢生(でこぼこ)を再治療するには、まず、歯列をきれいに並べるためにあごと歯のサイズとのバランスをとる必要があります。
でこぼこに並ぶのは、あごのサイズに歯が全て収まりきらないことが原因のため、非抜歯で矯正すると今回の失敗矯正のように前歯が突出してしまうことになります。これを治療するには上下左右合計4本の抜歯を行い、まずはスペースを確保することが先決です(今回は第一小臼歯4本を抜歯しました)。

症例 今回の抜歯部位

そして、スタンダードエッジワイズ法(与五沢エッジワイズシステム)に装置を取り替えて、治療をやり直すこととしました。前医院で行った治療は平均値を元にして作られた型にはめていく治療ですが、このような再治療の場合は全て手作業でフルオーダーメイドと呼ばれるスタンダードエッジワイズ法(与五沢エッジワイズシステム)で修正していく方が確実です。

症例
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症例
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  1. 前歯の突出はきれいに改善されました。
  2. 右側上下臼歯の咬み合わせが整いました。
  3. 正中も合っています。
  4. 上下歯列のでこぼこも解消され、きれいです。
症例
  1. 横顔を確認すると口元の位置が後退し、きれいな状態になりました。
  2. 頭部X線規格写真(セファロ)でも歯の突出がなくなっています。
  3. 歯根が平行に並び、きちんと咬めることが確認できます。

■総括

症例

無事に動的治療が終了した時点の頭部X線規格写真(セファロ)です。前歯の歯列は出っ歯が後退してきれいになっています。また軟組織(唇)の位置も後退し、自然な状態になっていることがわかります。
抜歯することで無事に歯の並ぶスペースが整い、きれいな口元に仕上げることができました。

なお、勝手に削られてしまった前歯については一般歯科で修復していただくほかなく、矯正治療では治療できないことをあらかじめご了解いただき、信頼できる一般歯科医院をご紹介させていただきました。

この症例から学ぶべきポイント
今回の症例で失敗の原因は、非抜歯で治療したことでしょう。
物理的にあごと歯のサイズに無理があるところを非抜歯で治療してしまうと、前に突出してしまうのは当然です。問題はこれを前医院の担当医師が認識していたか、患者さんに説明していたかではないでしょうか。
(もちろん、そのような治療に患者さんが同意されるとは思えませんから、結局はそのような治療はあり得ないわけです。)
矯正治療は「創造の医療」とも言い、マイナスをゼロにするための治療ではなく、新しい形を作り出す治療ですから、「ただ、歯がきれいに並ぶだけ」で良いのか、「口元の美しさや咀嚼機能も考慮されたきれいな歯並び」を求める治療なのか、どのようなゴールを設定するかは歯科医師によって考え方が異なります。

非抜歯治療をされる場合は、仕上がりについて、是非、担当医にご確認ください。
また、抜歯した場合との違いについても確認されると、よりこのような失敗を避けることができるかもしれません。

矯正治療を行う際は、ただ歯がきれいに並ぶだけではなく、口元の美しさまで考慮した治療計画を立ててくれる歯科矯正医を選んでいただきたいと思います。

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