スタンダードエッジワイズ症例
【失敗矯正例5】途中なのに治療終了の宣告
歯科矯正医によって違う治療のゴール(目標)
前医から「次回で治療終了」と言われたものの「この状態で本当に終わり?」と不信に思い、セカンドオピニオンで来院された患者さんの例です。この方は治療結果に納得できず、前医に「まだ隙間が残っている」と伝えたところ「こういう歯の形だから仕方ない」と言われたそうです。
治療のゴール(最終目標)に対する考え方は担当する歯科矯正医によって異なるため、治療を始める前に治療計画を確認し、患者さんが納得できるゴールが設定されているかを確認されることが大切です。
再治療者 | 廣島 邦泰 アイウエオ矯正歯科医院 |
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治療開始時年齢・性別 | 33歳8ヵ月 女性 |
前医での治療装置 | マルチブラケット装置(ストレートエッジワイズ法) |
患者さんの症状 | <「本当にこれで終わり?」と不信に思い来院>![]() 写真の状態で「次回で治療は終了」と言われ「この状態で本当に終わり?」と不信に思い、セカンドオピニオンで来院されました。 下の犬歯が後ろ向きにたおれていて、すき間が残り、奥歯にはねじれが残っていました。 |
■この症例の問題点
まだすき間が残っているのに・・治療前と転院時の比較
前医では矯正治療が約2年、保定期間が約1年の予定と説明を受け、下顎右側第一小臼歯と左側第二小臼歯の合計2本を抜歯して治療を開始したそうです(抜歯部位:写真1.×印)
説明の時にきいた抜歯部位は、左側第二小臼歯ではなく左側第一小臼歯でしたが、なぜ抜歯部位が変わったかという説明はなかったとのことです(写真1.▲印)
1.治療前(前医で撮影)

2.転院時

1.と2.の写真を比較してみましょう。
歯のでこぼこについては改善が見れらるものの、まだ歯と歯の間や上下の咬み合わせにすき間があることがわかります。(写真2.矢印)
詳しい検査で判明したその他の問題点
<咬み合わせの異常>


上顎第二小臼歯と下顎第一大臼歯は両側ともに交叉咬合(上の歯が下の歯よりも舌側に位置していて、かみ合わせが逆になっている状態)が残っていました(黄色の円部分)
<奥歯のねじれ>


一見きれいに並んでいるように見えますが、奥歯がねじれた状態になっています。
歯型模型の黒い線を見ていただくと、上奥歯の溝と下奥歯の山のつながりが乱れていることがわかります。(緑色の矢印部分)
■再治療
頭部X線規格写真

再治療にあたって、精密検査を行い治療方針をかためました。
横顔のレントゲン写真で確認すると口元のバランスはとれているため、あらたな抜歯は行いませんでした。
上下額ともスタンダードエッジワイズ法に切り替え、治療を開始しました。
■治療結果
<1年6ヵ月で無事終了した再治療>



治療は1年6ヵ月で無事終了し、上下の歯のかみ合わせが良くなり、歯並びがきれいになりました。
奥歯のねじれも改善されています。
患者さんの希望でお顔の写真は掲載できませんが、不満を感じていたでこぼこやすき間がなくなり、自信を持って笑えるようになったと喜ばれています。
■治療前後の比較ポイント
緊密な咬み合わせ

歯1本に対し2本の歯と咬み合うのが理想の咬み合わせです。
転院時には隙間が空いていましたが、再治療後にはきちんと咬み合うようになりました。
左右対称の美しい歯列

奥歯がねじれ、歪んでいた歯列が改善され、再治療後は左右対称の美しいアーチ型になりました。
平行に並ぶ歯の根

歯の根と根が近づき過ぎず平行に並んでいるのが理想の状態です。転院初診時には特に右下の犬歯に傾きが見られますが、再治療で改善されました。
この症例から学ぶべきポイント
矯正治療は、怪我や病気のような「元の状態に戻す」治療とは異なり「新しい状態を創り出す」治療であるため、治療のゴール(最終目標)に対する考え方は担当する歯科矯正医によって大きく異なります。
推測ですが、この症例の前医が考える「矯正治療のゴール」は、Yogosawa Foundationとは異なるものだったのかもしれません。
きちんとした矯正治療の知識・技術を持つ歯科矯正医であれば、精密検査に基づいた治療計画と治療のゴール(最終目標)を作成し、その内容について患者さんに十分な説明を行います。
そうした説明をしない、そもそも精密検査をしない医院は論外ですが、治療を始める前に治療計画を確認し、患者さんご自身が納得できるゴールが設定されているかを確認されることが大切になります。
Yogosawa Foundationでは、歯を綺麗に並べるだけでなく、機能的で安定した咬み合わせ、バランスのとれた美しい口元(横顔)にすることが歯の矯正治療であると考えています。